Diary

凪ぎ

2015/02/09(Mon) 21:51
穏やかに。
鏡のように。
澄んだ空気が、動かない。
微動だにせず。
佇んでいる。

西の空から、東の海へ。
南の谷から、北の山へ。

空高く、真っ直ぐに。
昇っていく煙を見上げている。

一枚の葉も動かず、一粒の水滴すらも落ちることはない。

この空気の中で、地面の上で。

窒息死しそうな生き物たちが。
火を焚き、命乞いをし。
供物をささげ。

騒ぎ立て。

届くはずのない祈りを。
変わることの無い世界へ。

僕はただ。
その、無力感に苛まれる生き物を。

海の底から、見下ろしている。

冷たい世界と、温かい世界。

二つがぶつかることがあれば。

やがては、凪ぎは、懐かしく。
望んでも手に入らない、遠くへと。

今、見えている景色が、揺らがないうちは。
僕の瞳は、凪いでいる。
いつも、自分だけはと、その世界から隔絶されて。
その実、世界を求めているのは、いちばん、自分しかいない。
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